重森三玲庭園(無字庵庭園)美術館
美術館は吉田神社の裏参道近くにある。
吉田神社の社家である鈴鹿家の所有であったものを、昭和18年に重森三玲が譲り受け、作庭、自宅としたものである。
現在は庭園美術館として、書院・書院前庭・好刻庵は予約制ではあるが、一般開放されており、お孫さんである三明氏が丁寧に解説下さり、少人数で拝観する庭園は誠に贅沢である。
本宅及び、書院は江戸期の建造物であり、元々は近衛家が社家へ援助し建てられ、吉田神社へ参拝する際の潔斎場及び休憩所としての役割でもあったそうだ。
そこに本宅・茶室など重森三玲の美意識でもって建物が加えられ、新旧混じり合った、格調高い建築となっている。(書院のランプは親交のあったイサム・ノグチ作)
ハレなる場所へ向かうための場所、半清浄なる役割を持つ場に作られた庭は、晴れやかなる趣である。色調が揃えられた青岩(吉野川流域から運び込んだそうだ)の迷いがない配置は豪快でありながら、洗練されている。
前庭の写真を見て、おやと思われる方もいるだろう。
一般公開前(庭園は2005年秋より公開開始)に、シャープ「アクオス」TVコマーシャルに使用されたことがあるからだ。
書院前庭
苔を島に、青岩を山に見立て、白砂の海に、寄せる波までモダンに表現。
写真の左端の石は舟を表している。
好刻庵(室内での撮影は禁止、屋外からフラッシュ無しでの撮影は可)
鮮やかな市松模様の襖、襖の取っ手や釘隠に到るまで、微に入り細に入り、徹底的に“三玲好み”を追求した茶室。
好刻庵より見た庭。
左端に見える祠は、近衛家が祀られている。
時にダイナミックであり、斬新な構図の庭は、見る者に威圧感をもって迎えるのではないだろうか。
なので、申し訳ないが私は、松尾大社の様な大きめの庭園(ここが重森三玲庭園の最高峰なのだが)よりも、こちらの庭園美術館や瑞峯院の独坐庭の様に、小規模ながら、インパクトのある庭園の方を好む。
また庭園美術館では、夫人の為に植えたという桜が、色無きはずの枯山水に、ひとかどの優しさを加え、花期には神気の宿り木の如く庭に更なる霊瑞をもたらしているかのように思う。
重森三玲:1896-1975年。岡山生まれ。 作庭家・庭園史研究家。
画家を志し、上京するも挫折。その後、茶道・華道を深め研究し、独学で作庭を学ぶ。
18歳の頃には、既に生家に「天籟庵」設計。
重森三玲庭園美術館は、1929年、研鑽のため移り住んだ旧邸。
京都での作庭は、東福寺方丈庭園・東福寺塔頭光明院庭園・大徳寺塔頭瑞峯院庭園・松尾大社庭園など。
主な著作に「枯山水」「日本茶道史」「日本庭園史図鑑」ほか。
重森三玲庭園美術館(完全予約制)
住所:〒606-8312京都市左京区吉田上大路町34
TEL:075-761-8776
HP:http://www.est.hi-ho.ne.jp/shigemori/
参考
写真:2008年4月2日(桜が咲いている写真全て)
2008年7月22日(青葉が写っている写真全て)
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