台湾雑記(6) 初台湾2003 中正紀念堂と台湾の徴兵制
台北車站からMRT淡水線にて中正紀念堂へ。
中正紀念堂とは、中正公園内にある、初代総統蒋介石の白い基台に青い屋根の紀念堂だ。公園はとても広く、同公園内には国家戯劇院と国家音楽庁(演劇・音楽を勉強する学校)がある。こちらは対照的に朱の古典形式建物だ。
死亡時の年齢と同じ89段の階段を上ると、衛兵に守られた巨大な蒋介石の座像があり、館内には、遺品や資料が博物館のように並んでいる。
丁度、最期の衛兵閉場式(国旗を降ろしていた)を見ることが出来た。
小雨が降っていたせいか、余り見学の人はいない。Tちゃんも濡れるのが嫌だと先に紀念堂へ行ってしまった。S君は私に付き合い、色々説明をしてくれた。
衛兵は統制のとれた動きで行進、国旗を下げ帰っていく。蒋介石座像前の衛兵も微動だにせず、瞬きもしない。汗が流れたら拭き、携帯している銃の位置や服装の乱れは逐一直す側にそれだけの為にいる世話役の上官がいた。
彼らを見ると随分と若い。S君が彼らは徴兵制で来て居るんだよと教えてくれた。ここにいるのは徴兵の中でもエリートなんだそうだ。資格として、五体満足であること、眼鏡もダメ、身長が180センチ以上であること、家族に犯罪者がいないことなど条件が色々ある。今ここにいるのは海軍だそうだ。
台湾の徴兵制については、時々S君から聞いていた。18歳以上の台湾国籍の男子は2年間徴兵へ行かなければならない。徴兵が終わらないと外国へも行けないし、就職も出来ない。そして、陸海空軍どこへ行くかはくじ引き!なんだそうだ。S君は高校卒業後、陸軍での徴兵を済ませてから、日本へ留学してきた。
Tちゃんのお国の韓国も徴兵制がある。テレビでは韓国スターが徴兵へ行くかでもめ、彼女自身、徴兵へ行ってない男は男じゃないと常々言っている。(台湾でもそうだが、そのために外国籍をとったりするそうだ。だが、それをしてしまうと後々国での生活が面倒らしい。また、女の子が嫌うので、結婚も出来にくいそう。)
18歳以上というと、日本では大学生か社会人。最も気力・体力も充実して、遊びに仕事に女の子とのお付き合いに励んでいる年代だ。その時期に一種特殊な状態で隔離され、肉体的にも精神的にも大変で危険な軍隊へ行く。実際にS君の脚は、徴兵中の大怪我で右足半分の皮膚の色が変わってしまっている。(彼の場合は、訓練中の事故ではなく、休暇中に交通事故に遭った。徴兵中だったため軍事病院に担ぎ込まれ、荒っぽい手術の結果、こうなった。)
同年代で、あまりにも違っている。それがいいとか悪いとか、そういうのではなく、日本人の私は聞いてみたくなった。
私:「徴兵制について、どう思っているの?」
S君は少し黙り、答えてくれた。
S:「正直に言って、はっきりした答えは持っていません。確かにマイナスなこと多いです。例えば、仕事でIT関連などですと、2年間も現場にいないとと取り残されます。お客さんも逃げてしまうかもしれません。彼女や家族や友人とも過ごせなくなるし、大学で研究をするなら、勉強も追いつかないかも。それに、やはり危険ですから。ですが、自分を見つめたり、自分の国というものを把握するには、とてもいい機会です。実際に攻めてこられたら、台湾の軍事力では3時間も持たないでしょう。(複雑なお国事情で、仮想敵国はかの国。)それを身をもって考えさせられます。ですから、そうならないように、経済的、文化的、政治的にも成長しなければと思います。まぁ、そこまで真面目ではないですが(笑)。もし、日本でいけこやTちゃんが痴漢にあっても、守ってあげられる自負はありますよ~。」
照れたのか最期の方は少し笑いながらだった。
けれど、普段、明るく冗談をいうS君のふと見せた表情が、とても印象に残った。
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