« 岡山にて、皆既月食2011  | トップページ | 有難うございました! »

2011.12.28

京都紅葉便り2011 その2 滝口寺・祇王寺・大原実光院

建礼門院の雑仕横笛といふおんなあり。滝口これを最愛す。(略)十九の年もとどりきって、嵯峨の往生院におこなひすましてぞゐたりける。横笛これをつたへきいて、「われをこそすてめ、さまをさへかへけん事のうらめしさよ。たとひ世をばそむくとも、などかかくとしらせざらん。人こそ心つよくとも、尋ねてうらみん」とおもひつつ、あるくれがたに宮こをいでて、嵯峨の方へぞあくがれゆく。


Img_5473_2


Img_5485_3


往生院とはききたれども、さだかにいづれの房ともしらざれば、ここにやすらひかしこにたたずみ、たづねかぬるぞむざんなる。すみあらしたる僧坊に、念誦の声しけり。

Img_5478_3

滝口入道が声とききなして、「わらはこそこれまで尋まひりたれ。さまのかはりてをはすらんをも、今一度みたてまつらばや」と、具したりける女をもていはせければ、滝口入道むねうちさはぎ、障子のひまよりのぞひてみれば、まことたづねかねたるけしきいたはしうおぼえて、いかなる道心者も心よはくなりぬべし。やがて人をいだして、「またくこれにさる人なし。門たがへてぞあるらん」とて、つゐにあはでぞかへしける。横笛なさけなううらめしけれども、ちからなう涙をおさへてかへりけり。


『平家物語 巻第十 横笛』

滝口寺


祇王廿一にて尼になり、嵯峨の奥なる山里に、柴の庵をひきむすび、念仏してこそゐたりけれ。いもうとのぎによも、「あね身をなげば、我もともに身をなげんとこそ契しか。まして世をいとはむに誰かはをとるべき」とて、十九にてさまをかへ、あねと一所に籠居て、後世をねがふぞあはれなる。母とぢ是を見て、「わかきむすめどもだにさまをかふる世中に、年老をとろへらる母、しらがをつけてもなににかはせむ」とて、四十五にてかみをそり、二人のむすめ諸共に、いつかうせんじゅに念仏して、ひとへに後世をぞねがひける。

Img_5502_3


Img_5495


たそかれ時も過ぎぬれば、竹のあみ戸をとぢふさぎ、灯かすかにかきたてて、親子三人念仏してゐたる処に、竹のあみ戸をほとほととうちたたくもの出来たり。(略)たがひに心をいましめて、竹のあみ戸をあけたれば、まゑんにてはなかりけり。仏御前ぞ出来る。(略)四人一所にこもりゐて、あさゆふ仏前に花香をそなへ、よねんなくねがひければ、ちそくこそありけれ、四人のあまども皆往生のそくはいをとげけるとぞ聞こえし。


『平家物語 巻第一 祇王』


祇王寺


此御すまゐも都猶ちかく、玉ぼこの道ゆき人の人目もしげくて、露の御命風を待たん程は、うき事きかぬふかき山の奥のおくへも入なばやとおぼしけれども、さるべきたよりもましまさず。ある女房のまいて申しけるは「大原山のおく、寂光院と申所こそ閑にさぶらへ」と申ければ、「山里は物のさびしき事こそあるなれども、世のうきよりはすみよかんなる物を」とて、おぼしめしたたせ給ひけり。


『平家物語 潅頂巻 大原入』


Img_5691


Img_5692


寂光院では無かりとも、女院の眺む様はいかばかり。


Img_5699


秋霧に濡るる姿は、墨染の女院のかんばせ。


Img_5724

二位殿に抱かれし雲上の龍、波のしたにも都さぶらふ。


Img_5808


神璽内侍所も、ひとたびは波の下へ。

Img_5821


一門も、千博の底へぞ入り給う。


Img_5732


女院のみ、御おぐしを熊手にて引かれ、汀に留められ。

Img_5829


Img_5774


Img_5777


昔は玉のうてなをみがき、錦の帳にまとわれて、暮らしたりしが。


Img_5706


平家にあらずば人にあらず、我が身の栄華極めしも。

Img_5741


今はありとしある人にはみな別れ果てつ。

古来より並び立たずの二季節、春花は栄耀、紅葉は散華、この庭に盛者必衰の理を表すか。


実光院


参考

写真:2011年11月21日 滝口寺・祇王寺
    2011年11月26日 大原実光院

|

« 岡山にて、皆既月食2011  | トップページ | 有難うございました! »

コメント

いけこ様、こんにちは

いけこ様の撮られた祇王寺も

しっとりとした雰囲気が漂っていて

よろしおすね~^^

本年も、ありがとうございました


御家族と共に、良い新年をお迎え下さい

投稿: 高兄 | 2011.12.29 10:22

こんにちは、高兄様

この時はまだまだ紅葉は進んでおらず、後ろの滝口寺からの紅葉が色を添えた様子でございました。
今年の大河は「平清盛」、祇王達が登場するのはまだ先ですが、平家物語でまとめてみましたの。

投稿: いけこ | 2012.01.04 13:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/84623/53538151

この記事へのトラックバック一覧です: 京都紅葉便り2011 その2 滝口寺・祇王寺・大原実光院:

« 岡山にて、皆既月食2011  | トップページ | 有難うございました! »